ペーパーレス化と、ユーザビリティの向上。
それが、農林水産省職員生活協同組合のWeb管理者である安田道隆氏の急務だった。
1万4000人の現役農水省関係者、2000人のOB会員をもつ「農林水産省職員生活協同組合」。既存サイトは市販のソフトを用いて、HTMLで組んだもの。物産販売・保険商品案内などを扱うEC機能もなく、必要最小限の情報だけを載せた、“ペラ1”に近い表札型のホームページだった。安田氏は、Webデザインや開発の知識などは一切もっていない事業部主事。Web担当者という専門職は組織内におらず、「とりあえず更新だけできればいい」というスタンスでWeb管理者に任命された。
「一般企業のコーポレートサイトのようなカッコよさ、見た目の美しさがないサイトであることは、Webマスターに就任してから気になっていました。しかし“組合”という組織の性質上、ユーザーインターフェイスに凝ったり、予算を充てたりする機会もなく、農林水産省職員生活協同組合のサイトは旧時代のビジュアルのまま、取り残されていた感があります」
右も左もわからない状態から、サイトの運営を行うことになった安田氏。更新者の立場から見ても、またユーザーである組合員の立場から見ても、農林水産省職員生活協同組合のサイトの利便性は低かった。
そんな“体裁ばかりのWebサイト”を変える必要が生じたのは、2010年初頭。会員管理・問い合わせ応対の一切を電話と郵便物で行っていた同組合内に、ペーパーレス化の動きが生まれていた。また、かねてより寄せられていた会員からの要望「会員一人ひとりの専用ページがほしい」というユーザーの声が、無視できない段階にまで増えており、それがWebサイト大幅改修への追い風となった。